角田光代

空中庭園

角田光代:著(文春文庫)

第3回婦人公論文芸賞受賞。
直木賞を受賞した「対岸の彼女」より前に書かれた作品。
キョンキョン主演で映画化もされている。

「秘密をもたないこと」をモットーにしている京橋家
であるが、その実態は……。

問題作のように言われているみたいだけれど、
こういう家族って多いんじゃないかなあ。
まるで学芸会のように、幸福を絵に描いたような家庭を
それぞれが演じている誕生日の食卓の風景なんて、
なんか分かる気がするし。

チョロ助みたいなダンナって、その辺にごろごろ
存在してそうだし。
鬱陶しい母親から逃げたくて結婚相手を探す
気持ちも理解できるし。
マナやコウのような高校生、中学生って、
まさにイマドキの子供じゃないの?
格別驚くような内容ではないけれど。

桐野夏生の小説のように、ひえーっと引いてしまう
ようなグロテスクな話よりも、世間に普通にあることを
小説として読ませる方がずっと難しいかもしれないね。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

対岸の彼女

角田光代著(文春文庫)

第132回直木賞受賞作。
随分と話題になった小説のようだけれど、
私が読もうと思ったのは、NHKの英会話の
テキストで紹介されていたから。

「事実は小説より奇なり」って言葉が浮かんだけれど、
こういう時には使わない? ちょっと違う?
あまりにも内容がリアルで気持ち悪いです。

「家のなかは整頓され、手作りの料理が並び、
引き出しにはアイロン済みの衣類が入っている
その状態が、修二にとっては当然の、ゼロ地点
なのだ。何かひとつでもおかしなことがあれば
それはただちにマイナスになる。」

と、子持ち主婦の小夜子さんは考えるんですが、
世の中、こういう旦那が多いってことでしょうか?

小さな会社の女社長、葵さんは小学生の頃から
ずっとイジメられていた女性。引っ越した田舎の
女子高で、やっと心から信頼できる友ナナコ
と出会うのだったが……。

女同士って面倒くさい!って、この歳になって
初めて強く思うようになりました。
職場での人間関係が煩わしいと思うことは
過去に何度もあったけれど。
幸い学生時代には、イジメられた経験もないし。

一人じゃ喫茶店にも入れない主婦たち。
古い付き合いで仲がいいのかと思ったら、
「あの人にはさんざん嫌な思いをさせられたの」
と愚痴りながら、やっぱり一緒にお茶している
のは何故? そもそもどうして何年も付き合って
いるの? それは何のため?
暇つぶしのため?

しつこいくらいお茶に誘いながら、
陰では洋服や持ち物の値踏み。
「安っぽい」と悪口を言ってたり。
ゴシップ大好きで、他人の噂話。
それも批判ばかり。

今の私は、小夜子さんの精神状態に似ているかも。

「私たちの世代って、ひとりぼっち恐怖症だと思わない?」
「友達が多い子は明るい子、友達のいない子は暗い子、
暗い子はいけない子。そんなふうに、だれかに思いこま
されているんだよね。」

と女社長の葵さんが語るのとまさにソックリ同じ
ようなことを言っている人がいて驚きました。
小夜子さんと葵さんは30代女性だけれど、
40代でも50代でも、そう思う人はいるんですよね。

一人で喫茶店でコーヒーを飲むのがカッコいいと
思っていた短大生の頃。一緒にお茶する友達が
いなかったからじゃなく、一人で行動出来る女性に
憧れていたあの頃。
今ではすっかり一人でどこでも行けるようになり、
一人が気楽で楽しいとさえ思える。

独身、子持ち主婦、バツイチ、キャリアウーマン等、
立場が違うと友人関係を築くのは難しい。
でも家庭環境など境遇が似ていても、そんなのは
良い友達関係になれるかには影響しない。
真の友人になれるかどうかは、それだけじゃ決まらない。

小説のラスト、小夜子さんと葵さんの未来に
ちょっぴり希望が感じられて嬉しかったな。
人を信じることから始めなきゃ、何も変わらないんだよね。

| | Comments (0) | TrackBack (0)