荻原 浩

明日の記憶

荻原浩著(光文社)
やっと図書館で借りて読むことが出来ました。

50歳になったばかりの佐伯は、歳のせいで物忘れが
酷くなったと思っていたところ若年性アルツハイマーと
診断されるのだった。

今日のニュースに、高齢者の運転免許証更新時に
認知症検査が行われることになった云々というのが
あったけれど、まさにその検査を佐伯は受けている。
歳や今日の日付けと曜日、三つの単語を覚えたり、
簡単な足し算、引き算。

私もダンスのレッスンで突然頭の中が真っ白になり、
直前に出来ていたはずの振りがどーしても思い出せない
ってことがたまにあって、そういう時は本当に頭の中に
白い霧がかかった状態だから、とても他人事じゃないー。
恐れ慄きながら読みました。

アルツハイマーに罹ると、昔の記憶よりも短期記憶、
直前の記憶が失われるらしいんだよね。
他の症状もなんだか似てる気がする。
夜なかなか寝付けないとか、めまいがするとか。
私は貧血のせい、貧血のせい~と言い訳してるけど、
明日は我が身?

いろんな人の顔と名前を思い浮かべて確認したり、
途中まで読んだページ数を記憶したりして、
自分は違うと否定するのに必死です。自問自答。
・・・・・・佐伯さんと同じことしてる。

介護の授業で、この小説を紹介する先生がいたんだけど、
佐伯氏を介護する大変さ辛さなどは書かれていません。
まだそこまで病状が進んでいないので。

記憶が失われていく恐怖だね~、やはり。
アルツハイマーは脳が冒され死に至る病なので、
死への恐怖も付いてくる。

佐伯氏は趣味が陶芸で、なかなかの腕前。
今まで出来ていた日常のことが出来なくなっても、
会社勤めが無理でも、土をこね、器を作ることを
身体が腕が覚えている。
彼が<彼>であることを証明するかのように。

それが読んでいて救われるというか、ホッとするところ。

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「なかよし小鳩組」と「母恋旅烏」

荻原浩

「なかよし小鳩組」
デビュー作「オロロ畑でつかまえて」の続編になる作品。
倒産寸前の広告代理店と、その社員たちが登場。
今回の仕事は、ヤクザ小鳩組のイメージアップ戦略だった。
荻原作品にはヤクザがよく登場しますが、そっち方面にも
相当詳しいのでしょうか?あまり関わりたくない業界です
が、広告業界出身だと詳しくなるの?

ラストが何故かマラソン大会。
荻原さんの発想って凄い面白いと思う!
ヤクザとマラソン、不釣合いな組み合わせだよね~。

「母恋旅烏」
元は大衆演劇の役者一家の花菱家。
レンタル家族業で食べていたけれど、借金もかさむし、
再び旅回り一座に戻ることになる。
情けない父親と家族を見守る<ぼく>の視点で書かれて
いるのが笑えるし泣けるし。
昔、レジャー施設などで見たことあるので懐かしかった。
今でも存在するのであろうか?>旅回り一座

芝居の舞台裏を覗いた気分になれて興味深かったです。

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僕たちの戦争

荻原浩著(双葉文庫)

19歳のフリーター、しかしアルバイトもクビになり、
プータローとなってしまった健太はサーフィン三昧の日々。
親にはイヤミを言われ、恋人ミナミにも少々呆れられている。
ある日、サーフィン中にタイムスリップ。
目が覚めると、そこは1944年だった。

よくあるタイムスリップものと違うのは、健太そっくりの
吾一という男が存在することかな?
健太と吾一が入れ替わり、周囲の者は「何か変?」と
思いつつ彼らを受け入れ、当人たちは右往左往、
困惑しながらもその時代に適応していく様が可笑しい。
私なら絶対耐えられないと思う軍隊生活も健太は
要領良くやっているし。
著者が描く、健太と当時の若者との意識の違いは、
「生き延びたい」という強い想いだろうか。
愛する人のために、家族のために死ぬのではなく、
とにかく何が何でも生きる!という気持ちかな。

吾一は現代の若者や人々を見て、自分たちが戦争で
守ろうとした日本の現実に落胆し、こんなはずでは・・・
と思うのだけれど、実際に厳しい軍隊生活を経験し
戦争を生き抜いた人たちは今の世の中をどのように
見ているのでしょうか。

ちょっと謎めいた余韻が残るラストは秀逸。
森山未來、上野樹里、内山理名でドラマ化決定!
9月17日(日)夜9時放送らしい。
楽しみ!!


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コールドゲーム

荻原浩著(新潮文庫)

中2時代のクラスメートが次々と襲われる。
犯行予告から、当時イジメの標的だった廣吉の
名前が浮かび上がるが、転校した彼の行方を
知る人はいなかった。

「次は自分が標的になるかも」という恐れを抱き、
ついついイジメに加担してしまう人が多い中、
主人公の渡辺光也は止めることもしなかったが
見て見ぬ振りだった。
果たして彼は報復の対象になるのだろうか?
犯人は本当に廣吉なのか?
そして結末は?

なかなか読み応えがあり、最後まで読者を
引っ張るお話でした。
著者は、光也に対して厳しいです。
苛められていた廣吉に対しても結構厳しい見方。
何もしないのがダメ!ってことなのでしょうか。
少しでもいいから闘わなければ!ってことかな。
そして一番酷いのは、過去に自分のしたことを
すっかり忘れている同級生。

廣吉くんは、過去は過去として葬って、
新たに自分の人生を生きるべきだったんだよね。
きっと。
でも、トラウマになりそうなイジメの描写ばかり。
キツイ話でした。

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ハードボイルド・エッグ

荻原浩著(双葉社)

探偵なのだが、ペット捜索ばかりの主人公。
ダイナマイトボディ(死語?)の秘書を雇ったつもりが、
現れたのは……。

なんといっても秘書の片桐綾さんがイイ!!
ハードボイルドを気取っている探偵もなかなかだが、
片桐綾さんのキャラには負けているかも。
あの最高傑作動物漫画『動物のお医者さん』を
彷彿させる生き物もストーリーに華を添えている。

私も主人公と同じくハードボイルド小説を読むのが
好きだったら、もっと可笑しい話かもしれない。
荻原浩さんの著作では必ず、2面性が強調される
人物が登場するような気がする。
そこが怖かったりするのだが、それ故にユーモア
小説と括れない味がある。

最後は、ホロリとさせられた。

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押入れのちよ

荻原浩:著(新潮社)

今までに読んだ荻原作品とは趣を異にしていると思いました。
「ぜ~んぜん怖くないから」という言葉を信じて読み始めた
のだけど、「ぜ~んぜん」とは言えないよー。

表題作「押入れのちよ」は確かに怖くないし、多少笑えるかも。
ビーフジャーキー好きな幽霊って……(笑)?

でも、妹が失踪した15年前の出来事とその後「木下闇」や
夫婦で殺人計画を実行する「殺意のレシピ」は
人間の心の闇を覗くようだし、
築40年以上の家と猫の話「老猫」は、その家にこもっている
悪臭が臭ってくるような気がして気分が悪くなりました。

寝たきりになった舅をいじめる嫁の話「介護の鬼」は
ほとんどホラー。現在、介護を勉強している身なのですが、
授業を聞いているよりさらに暗澹とするというか……。

私が気に入ったのは「コール」。
切なくて泣けます。こういう幽霊の話なら好き。
同じ幽霊話でも、ちょっと可愛げのある話だと思います。
何度も読み返しました。

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あの日にドライブ

荻原浩:著
「人生、今からでも車線変更は可能だろうか。」
元銀行員のタクシー運転手、伸郎は自分が選ばなかった
道を見てやろうと決心した。

ってことなんですが、大学卒業後、銀行員にならずに
憧れの出版社に就職していたら、もし目の前の妻と結婚
せずに当時付き合っていた恵美と結婚していたらと夢想
し、果てはその会社や恵美の実家へ行ったりします。

ま、そこまでは許すけれど、奥さんのことを「さげまんかも」
と勘ぐったりするのは許せん~。
人生は常に選択なので、奥さんを選んだのも自分、
銀行を選んだのも自分、辞めてタクシー会社に勤めた
のも自分な訳だから、自分に責任持たなくちゃ。

まあ、夢に描いた人生を歩んでみてもおそらく
現実は厳しく・・・・・・って話なんですが。
隣の芝が青く見えるのも仕方ないか。

上司には絶対服従な銀行の内部事情やタクシー会社
の様子が詳しく書かれていて、面白かったです。
特にタクシー運転手さんがお客さんを確保するための
努力を読んでしまったら、近くまで乗るのは悪いなあ
と気を遣ってしまいそう。

ラストの〆方がやっぱりイイです。荻原さん!


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誘拐ラプソディ

荻原 浩:著

借金と前科持ちの伊達秀吉は、世話になっている親方を
張り飛ばし、5万円と車を盗んで逃走したものの、
自分の未来に絶望し自殺を試みる。
そこに現れたのがお金持ちの息子・伝助くん。
身代金で人生をやり直そうと思った秀吉だったが・・・・・・。

荻原作品はサクサクと読めてしまう。
私にしたら早いペース。
ヤクザが警察の真似して、身代金受け渡し場所に張り込む
のだけれどバレバレな描写とか、ホントに可笑しい。
教師とか新聞記者とか公務員とか、何年も続けると自ずと
その風貌からはそれらしい匂いが発散され、空気をまとって
しまうけれど、隠そうとしても滲み出てしまうのは
ヤクザ屋さんが一番かもね。
伝助くんが、のんびりおっとりな子供なのがまた笑える。

「誘拐ラプソディその後」を書けそうなラストだった。


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オロロ畑でつかまえて

荻原 浩:著
小説すばる新人賞を受賞したデビュー作。

日本の最後の秘境といわれる大牛山の山麓にある寒村、
牛穴村の青年会のメンバーが「村おこし」を思い付く。
村のイメージアップを広告代理店に依頼するが・・・・・・。

そんなに上手く話が進むとは思えないのだけれど、
面白いから許します。
二本足で立ち上がると大騒ぎされた風太くんや
あざらしのタマちゃんブームなどを思い起こすと、
こういう荒唐無稽な話もアリかもしれない
と思ってしまうなあ。

すぐ目の前にある特産品には目を向けず、
お金や嘘のイメージ戦略で村おこし。
それは世間から叩かれることになるのだけれど、
結果的に彼らは自分たちの本当の「幸せ」や「価値」に
気が付くことになる。
それが最初に読んだ「神様からひと言」にも通じる
荻原浩流といった感じですね。

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神様からひと言

荻原 浩:著

京極夏彦さんの著作をひととおり読み終わり、
さて次は誰にしようかと物色中、目に留まったのが
帯に書かれた「書店員さんが大絶賛!」という文字。
13日公開の映画「明日の記憶」の原作者が
この荻原浩さんなんですね。

「明日の記憶」はまだ文庫になっていないようなので、
この本にした。

すんなりと決まった再就職先。
涼平は販売促進課に配属になり、大手広告代理店で
培ったことを仕事に活かすはずだったが・・・・・・。

面白い~。一気に読んでしまった。
こんなに笑える小説、今まであまり経験がないかも。
涼平はお客様からのクレーム対応が仕事の
<お客様相談室>に異動になり、ストレスで円形
脱毛症になってしまった人や喋れなくなった人、
仕事は出来るのに遅刻の常習者等々、
個性的な面々の中でもまれ強くなり、自分にとって
何が大切かを考えるようになるのだった。
彼らは実はリストラ要員。

組織では、よくある話だ。
不正が分かっても自分に責任問題がふりかかるのを
恐れ見ないふりの上司。保身しか考えない人。
人事権という力を持ち「首切るぞ」「勤務評定に
影響するぞ」と圧力をかける人。

かつて私が勤めた職場にそのまま当てはまるんだ、
これが!!
ダンナのコネで入ってきた人が自分の社内不倫を
知っている職員を退職に追い込むために
ダンナに悪口を吹き込んだり、意地悪をしたり・・・・・・。
この小説の若社長そっくりでしょー。
世間が許しても神様が許さないと思う。多分。

タイトルの神様にはいろんな意味があり、
お客様のことだったり、逆らえない上司のことだったり
本当の神様のことだったりする。深い!

ホントに溜飲がさがる嬉しいラストだった。

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